日常と虚構のワルツ

嘘時々ホント

下北沢

に行った。

下北沢にはそこらかしこによくわからない店があり、賑やかな街だと思った。
店と店の間に小道があり、そこはまるで異世界につながっているようだった。

僕はこの街に、セッションをしに来ていた。

セッション。そう、楽器と楽器でやるアレだ。決して下用語の暗喩ではない。それはもう、そうなのである。

僕は生まれた時から楽器が趣味だった。もうかれこれ楽器歴は10年くらいだ。生まれた時からちゃうやん。

母親から生まれた時、「どうしてお父さんとお母さんを選んでくれたんだい?」などと言う感じに、父が生まれたての僕に尋ねたところ「音楽性が一致していたから」と言っていたそうだ。
ちなみに2018年現在、母と音楽性は一致していない。

 

下北沢の道を歩く。
次の道を右に曲がれば目当てのスタジオのはずだ。
しかし角を曲がった時、僕は足を止めた。

そこにあるのは一面の砂漠だった。

地平線の彼方まで見渡せるほど、綺麗な砂漠と青空が広がっていたのだ。
ここは下北沢のはずだ。元来た道はちゃんと下北沢してる。では何が起こった?
僕が困惑していると「ちょっとちょっと困るよ!お客さん!」と工事現場の服を着たリザードマンに声をかけられた。

 

「いま工事してんだから、入ったらダメだよ!」
「ここ下北沢ですよね」
「当たり前でしょうが!」
「工事しすぎじゃない?」
「知ってんでしょ。下北沢がずっと工事してんの。こんなに広けりゃ終わるはず無いでしょうが」
「僕が五年前に旅行で来た時も工事してましたもんね」
「いまちょっとずつ下北沢再建してっから、待ちなさいよ。この砂漠ももう少ししたら下北沢になるから」
「なるほど」

 

下北沢でずっと行われていたのは下北沢という街の再建工事だったのか。
さっきの規模を見ると下北沢どころじゃ無いレベルで砂漠だったが、気のせいということにしておこう。

ふとスマホが鳴り、見ると本日セッションする予定だった人たちからラインが来ていた。
すでにスタジオに到着していて、B1スタジオにはいっているらしかった。

なるほど。
スタジオはどこだ。