が満開になりそうだ。
我が家は川の近くに存在している。
川沿いに桜の並木道が続く美しい場所で、桜の名所でもある。
今の家に住んで今年で二年目になるが、昨年はとても美しい桜が咲いていたのをよく覚えている。
そう言えば去年、桜の季節に散歩したわけだが、そこで不思議な出会いをした。
女の子と出会ったのだ。
白いワンピースを着た女性で、犬を連れた人だった。
年齢は女子高生くらいだろうか。
彼女が連れている犬の犬種はコーギーだった。
僕はコーギーが好きだ。
コーギーはよく食パンの写真と混同される。
それはコーギーのお尻が食パンのようにふわふわだからだ。
僕も一度は触れてみたいと思っていた。
そのコーギーが目の前にいたのだ。
桜の並木道を散歩していた僕の目の前に、突然現れた。
触れない理由はなかった。
僕はフラフラと誘われるように手を伸ばし、コーギーのお尻に触れた。
「ぐふふふ、ういやつよのう。ほれほれお尻が気持ちいいか? ここが良いんじゃろう? ここか? ぐふふふひひひふふへへぇ」
「スケベですね、ドスケベ」
僕が至極まっとうにコーギーのお尻を堪能していると、突然そんなことを言われた。
一体誰だ。そう思って顔を上げると、彼女が居たのだ。
「誰だ君は! 失礼なことを言うな! 僕はただ、コーギーのお尻を撫でくりまわしていただけだ!」
「私は桜の姫です。普通の人はそんなに執拗にコーギーのお尻なんて撫でないと思います」
「桜の姫だって……?」
なんだその痛いコスプレイヤーみたいな名前は。
オタサーの姫でもしてるっていうのか。
「おじさんは、とてもドスケベな人なんですね」
「誰がおじさんだ! 僕はまだ33歳だ!」
「30超えたら世間ではおじさんだと思いますけど……」
何だって? そうだったのか。
僕はまだ若者だと思っていた。
お腹も出てきたし、頭も禿げてきたけれど、まだまだ若いものには負けん、わしは学生のように若いとおもっておったんじゃ。
「のう、お前さんは、わしを年寄り呼ばわりするというのかい……?」
「何か急に老けてません?」
「そんなことはありゃせんのじゃ」
わしがヨボヨボと立ち上がると、少女は「とにかく、私の可愛いコーギーに触れないでください」と言って、犬を抱きかかえてしまったのじゃ。
「待て、逃げる気か?」
「ふーんだ。変態さんに私の可愛いタロウちゃんは触らせませーん」
「待つのじゃ! こりゃ! 待ちなされ! あ痛たたた! 腰がぁ!」
これが、わしと少女の出会いじゃった。
この時はまだ思いもせんかった。
まさか彼女の本名が山田花子じゃったとは。
桜の姫と名乗るとは……若気の至りとは恐ろしいものじゃのう。
わしも気をつけよ。