が我が家に会いに来た。
会うのは実に数年ぶりだった。
最後に会ったのは社会人2、3年目の頃か。
当時やっていたブログに僕が妹と話した様子が克明に記されていた。
「お兄ちゃん、まだ結婚してないんだね」
妹が僕に言う。
彼女と最後にあった時、確か大学四回生だったはずだ。
いまはいくつになったのか尋ねると彼女は大学四回生だと言った。
あれから10年近く経っているはずだが、不思議なこともあるものだと考えた。
「お兄ちゃん、覚えてる?
昔、将来大人になって、結婚相手がいなかったらお兄ちゃんのお嫁さんになってあげるって言ってた話」
覚えていない、と言った。
そんな記憶は脳に刻まれていない。
そもそもそのような気の狂った会話を実の妹と行う趣味はない。
「お兄ちゃん、まだ結婚してないよね」
それは趣味に人生を捧げたからであり貴様のような人間に哀れみを受けるような惨めな人生ではないこれはもう本当にそうなのであって強がりでは決してないいや本当にそうなんですよというようなことを話した。
「ちっ、なーんだ。適当に誘惑してお小遣いもらおうと思ったのに」
彼女はつまらなさそうに舌打ちをし、
冷蔵庫からフレーバー炭酸水を奪って帰っていった。
僕はそれを、黙って席から見送った。
妹が帰り、一人部屋に取り残される。
ふと、僕は末っ子であり妹がいないことを思い出した。
あの人は誰だったのだろう。
不思議なこともあるものである。