日常と虚構のワルツ

嘘時々ホント

が我が家に会いに来た。

会うのは実に数年ぶりだった。

最後に会ったのは社会人2、3年目の頃か。

当時やっていたブログに僕が妹と話した様子が克明に記されていた。

 

「お兄ちゃん、まだ結婚してないんだね」

 

妹が僕に言う。

彼女と最後にあった時、確か大学四回生だったはずだ。

いまはいくつになったのか尋ねると彼女は大学四回生だと言った。

あれから10年近く経っているはずだが、不思議なこともあるものだと考えた。

 

「お兄ちゃん、覚えてる?

昔、将来大人になって、結婚相手がいなかったらお兄ちゃんのお嫁さんになってあげるって言ってた話」

 

覚えていない、と言った。

そんな記憶は脳に刻まれていない。

そもそもそのような気の狂った会話を実の妹と行う趣味はない。

 

「お兄ちゃん、まだ結婚してないよね」

 

それは趣味に人生を捧げたからであり貴様のような人間に哀れみを受けるような惨めな人生ではないこれはもう本当にそうなのであって強がりでは決してないいや本当にそうなんですよというようなことを話した。

 

「ちっ、なーんだ。適当に誘惑してお小遣いもらおうと思ったのに」

 

彼女はつまらなさそうに舌打ちをし、

冷蔵庫からフレーバー炭酸水を奪って帰っていった。

僕はそれを、黙って席から見送った。

 

妹が帰り、一人部屋に取り残される。

ふと、僕は末っ子であり妹がいないことを思い出した。

あの人は誰だったのだろう。

不思議なこともあるものである。

忘年会

だった。

弊社の会社での忘年会である。

会社で忘年会をするのは数年ぶりだった。

 

色々仕事が溜まっていたがもはやうるさすぎて仕事どころではなかった。

適当に切り上げて帰ろうとしたら、弊社の代表にもう少し明るくなるよう説教を受けた。

しかしながらそれは少し違うのではないかと思った。

なぜなら僕に暗いと言うことはブラックホールを見て「くらいな…」というようなものだからである。

 

ブラックホールはとてつもない引力を持っている。

光すらも吸い込むほどの引力である。

そのようなブラックホールを眺めて「くらいな…」などと呟くのはナンセンスなのだ。

電気を消して「わっ、暗っ!」というようなものなのだ。

暗くて当然なのだ。

 

終電ギリギリまで説教をされて僕は自由について考えた。

自由とは空を飛ぶようなものなのだ。

青い空には沢山のあこがれがある。

しかしながらそこには危険なものも沢山あるはずなのだ。

そう、例えば空飛ぶ円盤とか。

 

そう言えば僕はUFOを見たことがある。

そう、空飛ぶ円盤を実際にこの目で見たのだ。

あれは京都の河原町での事だった。

僕が三条大橋で独り黄昏れていると、ふと空を見上げた。

どうして空を見上げたかは分からない。

呼ばれた気がしたから…とか書いたらそれっぽくなりそうな気がした。

そう、僕は呼ばれた気がしたのだ。

 

空を見上げるとUFOが浮かんでいた。

本当に円盤で、内側にあるライトがくるくる回転していた。

ドローンなどがまだ普及していない時だったから、少なくともドローンではなかった。

あれは確かにUFOだったのだ!

 

僕は周りの人を見た。

誰か一人くらいはUFOに気づくのではないかと考えられた。

しかしながら誰もUFOには気づいていなかった。

「なんてポンコツな奴らだ!」と僕は思った。

 

仕方なく持っていた携帯でUFOを撮影しようとした。

しかし上手く映らない。

撮影が下手だったのかも知れないが、とにかく取れなかった。

「なんてポンコツなカメラだ!」と僕は思った。

 

するとUFOはシュン! シュン!と瞬間移動するように場所を移すと、やがてフェードアウトするように消えてしまった。

あれ以来UFOは見ていない。

次に見かけたら必ず写真に撮ろうと思う。

しかしながらこのフェイク画像が入り乱れる昨今、だれがUFOなんて信じるのだろうか。

 

そんなことを考えているうちに最寄り駅へとたどり着いた。

自由について考えていた思想は消えた。

明け方5時

から活動している。

どうしてかと言われれば、すこし話が長くなる。

 

そう、あれは今から46億年前。

まだこの星に生命が存在しなかった頃、僕のスマホに後輩が飲もうと声を掛けてきたのだ。

そんな感じで終電まで飲んだ結果、朝五時に起きてしまった。

長くなると書いたが三行で終わったな。

 

僕はお酒を飲むと眠れなくなる。

睡眠が極端に浅くなるのだ。

その浅さは沖縄に存在する遠浅の海など比ではない。

ちなみに沖縄に遠浅の海が存在するかを僕は知らない。

 

お酒を飲むといつも人生について考えてしまう。

自分はこのままで良いのか。

自分はどうなりたいんだ。

 

そんなことを考えながら真剣な顔で鏡を見る。

 

ヒゲが濃い。

なんてヒゲが濃いんだ!

 

それは毛生え薬の影響だった。

僕は33歳の頃に本格的にハゲ始めた為、毛生え薬を飲むようになったのだ。

何と言う名前か忘れたが、確かアポトキシン4869と言う名前だった気がする。

この薬には様々な副作用があり、先駆者である江戸川コナンくんは髪の毛が生えた代わりに幼児退行した。

阿笠博士もいずれは飲むだろう。

 

そんなことを考えながら、朝5時を過ごした。