日常と虚構のワルツ

嘘時々ホント

この度無事に

転職が決まった。
現在僕は京都に住んでいるのだが、次の職場は東京だった。
そのため引越しをする必要があった。

東京のとある不動産屋で尋ねると良い物件を紹介してくれた。

駅から徒歩10分、リビングとキッチンがあり、お風呂とトイレは別。

洗面台は独立していて、会社まで通勤一時間。

これで家賃6万5千円。

 

東京で暮らす方なら分かると思うが、これは異常な価格である。

人が5人くらい死んでいないとこの価格にはならないだろう。

 

「凄くいい物件ですね。誰か死んだりしてないんですか?」

内見の際、僕が尋ねると不動産屋の営業は「いやいや」と笑いながら壁の赤黒い染みをサッと拭いた。

 

「おや、こんなところに切断された指が」

「前の住民が置いて行ったんですよ」

「なるほど」

僕は納得して頷いた。

 

ここが新しい新居か。

僕は窓から差し込む光をみて、少し笑った。

天下一品祭りだと大きく告知されていたので

天下一品に行った。

日曜の昼間と言うだけあってか普段店内に二組客がいれば御礼状態の近所の天下一品が満席になっていた。

これは凄い事である。

カウンター席に座らされてあっさりの大を頼んだ。  
 
 
天下一品のあっさり味とはちょっとした因縁がある。

学生時代、天下一品でこってり以外を食べる人間は屑だと当時の友人に罵られた事があったのだ。

それは僕の中でトラウマとなっていた。

僕は幼稚園時代より天下一品はあっさりしか食べていなかったからだ。

だからこの偏見には大変苦しんだ。

何度も涙を流したし、何度も嘔吐した。

再びあっさりを注文できるよう、過酷なリハビリに耐えねばならなかった。

そんな苦しみを乗り越えてようやく僕は再び天下一品のあっさり味へと回帰する事が出来たのであった。

そしてそんな約束された日がまさか天下一品の日だとは。これは運命を感じざるを得ない。  
 
 
あっさり味は美味しかった。大変おいしゅうゴザイマシタ。

僕みたいな浮浪者紛いの男でも天下一品は受け入れてくれた。

ありがとう。天下一品。

それはともかくとしてもらえるはずだったラーメンの無料券がいただけなかった。

今度本社へメールでクレームを出そうと思う。  
 
 
帰りしな寄った本屋で何故か瀬戸内寂聴特集コーナーが創設されていた。

読者層のターゲットも、そのコーナーを組んだ狙いもまるでわからなかった。

瀬戸内寂聴と僕、ガチで戦ったらどちらが強いのだろうと考えた。

空を飛んだ寂聴さんは中々強敵だろうと思った。

バランスボール

を購入した。

僕は現在暇があればパソコンをする生活だった。

一日座っていて、外に出たかと思ったらビールを飲む生活だった。

絶食したからドアは通れるが、下っ腹のデブさ具合は隠せなかった。

心のデブさは隠せなかった。  
 
 
 
一度街中にいるホームレスの人と対話をした事がある。

「僕とあなた、生産性があるとしたらどちらですかね」

「そりゃわしやろ。空き缶拾ってるし」

「確かに……」

なにか生産性のある事をするべきだと思った。

そこでバランスボールだ。

一日十時間近くパソコンの前にいるならバランスボールを使うと痩せるのではないだろうか。

そして痩せた僕に惚れた女性を抱き、子をなし、家庭を築けば僕の生まれた意味もあるというもの。

なにか重要な見落としをしている気がしないではなかったが、そんな訳で僕はバランスボールを購入した。

現在使い始めて十二時間ほど経つ。

腰の疲労が限界だ。  
 
 
 
何せバランスボールと来たら座っている間は常に重心がずれるので調整せねばならない。

それは常に下腹部の筋肉を使用しているという事と同義なのであった。

あと異様に腰を使ったトレーニングが出来るので女性と性行為した際の腰のトレーニングにもなるのであった。

僕は今日一日性行為時における腰のトレーニングを一時間程無心で行った。

腰の疲労が限界だ。  
 
 
 
それはそうと秋になると同居人がうるさいのでクリームシチューを作った。

味が濃かった。

「秋っぽい味ですね」と言われましたが。

秋の味の概念とは。

色々考えた。