日常と虚構のワルツ

嘘時々ホント

眠た

過ぎて意識が朦朧とする。

これから仕事とか信じられない。

昨日は飲み会だった。会社の人とだった。

それのせいで、僕は疲れて眠れていないのだ。

 

飲み会までは良かった。

飲み会から帰るとき、僕は確かに地下鉄に乗った。

その地下鉄に乗って、たまたま席が空いて、眠ってしまったのだ。

 

気がつくと僕は「きさらぎ駅」と言う謎の駅にいた。

電車内には誰も居らず、しゃがれた車掌の声で「終点です」とアナウンスがながれていたのを思い出す。

降りると誰も居らず、そして地下鉄に乗っていたのに外にいた。

奇妙な事もあるものだ、などと考えながら、自宅に向けて歩いていた。

歩きながら、ふと「自分の沿線上に、きさらぎ駅などという駅はあっただろうか」と考えた。

どう考えてもなかったが、あると言うことにしたら割と早期の段階で事実を飲み込むことが出来るのではないかと考えた。

 

きさらぎ駅はまるで廃駅のようになにも無かった。

草木と、鈴虫の声と、何かを導くように電灯がぽつりぽつりと暗闇に浮かび上がっているだけだった。

暗闇の中には人ではない誰かが立っている気がして、僕は彼らを写真に撮ると儲かるのでは、と酩酊した心地で考えた。

 

しばらく歩いたが、一向に自宅が見える気配はなかった。

途中で田中と言う名札をつけた人がいたので「僕の家はどちらでしょうか」と尋ねると、田中さんは暗闇の明らかにケモノ臭漂う場所を指し示した。

しかたなく僕は田中さんの言うとおり、その道に入った。

道中色々あって100回くらい死に掛けた後に、なんとか家に帰った。

本当に危なかったと思う。

途中で魔龍騎士サーバナイトの軍隊に襲われた時はもうダメだと思った。

今度から飲みすぎには気をつけようと思う。

京都

に結婚式で帰省した。

前の会社の同期の結婚式だった。

良く一緒に飲み会をしていた飲み仲間で、同期の中でも特に仲が良かった一人だ。

 

良い結婚式だった。

僕の隣では同期のNが、新郎新婦を無視して執拗に牧師を撮影していた。

ヒゲダルマの牧師を撮影する彼の姿は割と活き活きしていた。

一方で僕は向かい側に座った女性のスカートの中を覗こうとしていた。

新郎新婦の事はあまり見ていなかった。

良い結婚式だった。

 

東京

は飲屋街が多い。

中野だとか、新宿の思い出横丁だとか、変わっていて独特で面白い飲屋街が多い。

関西だとあまりない。

せいぜい大阪の難波くらいだろうか。


今日は横浜にある野毛という飲屋街で飲み会の予定である。

既に財布はエマージェンシーの警笛を鳴らしていたが、前々から行きたかったので財布に火をつけることにした。


変わった飲屋街と言うのには色々と思い出がある。

あれは五年前。

当日友人と共に飲屋街を練り歩いていたところ、不思議な横道があった。


「行ってみよう」


もはや一見のお店にばかり立ち寄っていた我々。

夜の街の奥深く、渦の底まで見てみようと言うことになったのだ。

その狭い路地を抜けると、奇妙なくらい広い空間に小さな出店が立ち並んでいた。

しばらく歩くと、美味しそうなビールのお店があった。

早速入ると、キツネ顔をした店主が「いらっしゃい」と愛想よく出迎えてくれた。


「こりゃ珍しい。人のお客さんだ」

僕と友人は顔を見合わせた。何を言ってるんだこいつは。

「こんなところにお店なんて、珍しいですね」

「そりゃあ、こんな妖怪の飲屋街が外にあったら驚くでしょう」

「妖怪の飲屋街なんですか、ここ」

「ええ、まぁ。知らずに来たんで?」

「はい」

「じゃあ、きっと酒に呼ばれたんでしょうね。今宵のお兄さんたち、良い顔で酔ってらっしゃる」

「そりゃどうも」


しばらく飲んでいて、不意にトイレに行きたくなった。

近くになかったので、一度先ほどの路地を抜けて、近くの公衆便所で済ませることにした。

ただ、戻ろうとしても、もうあの路地は見当たらなかった。

路地があった場所には、小さな祠が一つあるだけだった。


あの時一緒に飲んでいた友人とは、今も連絡がつかない。

あの日以来、完全に彼は消息を絶っていた。


僕は、今でも思うことがある。

今度彼に会ったら、飲み代を請求されるかもしれない。

それだけは避けたい。