に居る。
家の荷物を引っ越し業者が持って行ったからだ。
実家には何もない。漫画も、小説も、ゲームもパソコンも、何もない。
娯楽を制限された生活は僕に子供の頃を思い出させた。
子供の頃はよくファミコンをしていた。
兄と姉はスーパーファミコンをしており、僕はおさがりのファミコンしかさせてもらえなかったのだ。
「ドラクエ5」や「かまいたちの夜」と言った神ゲーを姉達がやる中、
僕はデータが速攻で消えるドラクエ3をやると言った苦行を行っていた。
面白そうなゲームを眺めるだけだった僕にとってスーパーファミコンと言うのはすこし特別な存在だった。
憧れの先輩的な位置だった。
そこに居ると胸が高鳴るし、手が触れるとドキドキした。
皮肉な事に、自由にゲームを買えるようになった今となってはゲーム自体しなくなってしまった。
でも憧れである事に変わりはない。
思い出は風化するけれど、感情は劣化しない。
実家に帰るとそんな懐かしい事を思い出す。
そう言えば家を引き払う際、同居人も他方へ行く事になった。
「一緒に東京に来るかい」と尋ねたが「私生まれも育ちも京都人ですので」と断られた。
私も生まれも育ちも京都なのですが。
そこらへんいかがお考えなのだろうか。