日常と虚構のワルツ

嘘時々ホント

この度無事に

転職が決まった。
現在僕は京都に住んでいるのだが、次の職場は東京だった。
そのため引越しをする必要があった。

東京のとある不動産屋で尋ねると良い物件を紹介してくれた。

駅から徒歩10分、リビングとキッチンがあり、お風呂とトイレは別。

洗面台は独立していて、会社まで通勤一時間。

これで家賃6万5千円。

 

東京で暮らす方なら分かると思うが、これは異常な価格である。

人が5人くらい死んでいないとこの価格にはならないだろう。

 

「凄くいい物件ですね。誰か死んだりしてないんですか?」

内見の際、僕が尋ねると不動産屋の営業は「いやいや」と笑いながら壁の赤黒い染みをサッと拭いた。

 

「おや、こんなところに切断された指が」

「前の住民が置いて行ったんですよ」

「なるほど」

僕は納得して頷いた。

 

ここが新しい新居か。

僕は窓から差し込む光をみて、少し笑った。