日常と虚構のワルツ

嘘時々ホント

僕の後輩に太った男が居た。

彼は僕が所属していた軽音楽部の後輩だった。

 

ある練習終わり、ボーカルを担当していた女の子が飲み物を忘れてしまった。

「このままだと喉を痛めるかも……」と彼女は不安げな表情をしていた。

その様子を見た後輩は「俺のカルピス飲む?」と言った。

彼はカルピスを手に持っていた。

自分の飲み物あげるなんて、いい奴だなこいつと僕は思った。

 

まさかその発言が原因で彼がセクハラ罪で吊るし上げられるとはそのとき思いもしなかった。

この話が今回の記事に関係あるかというと全く関係ないです。

 

昨日僕が部屋でいつもの様にブリッジをしながらポケモンGOは何故衰退の兆しを見せているのか考察していると、不意にスマホが鳴り響いた。

黒電話の音。それはすなわち着信を意味していた。

電話はおろか、仕事を辞めてから友人からのメールすらろくに来ない僕はいぶかしんだ。

一体誰だろう。

震える手でスマホを取り、画面をみる。

知らない番号だった。

電話に出るとなんと驚いた事に大学時代の友人A君だった。

 
A君は僕が大学生だったころの学部の友人だ。

誰とでもよく話し、気さくで交友関係が広い男だった。

彼と最後に会ったのは卒業式以来。つまり五年半ぶりだった。

「よ、坂、久しぶりだな」

久々に会ったA君は昔とちっとも変わっていなかった。

強いて言うとすれば、すこし日焼けしたくらいか。

「どうしたんだい、急に」

「仕事を辞めたって聞いてさ。久しぶりだし、ちょっと会いに来た」

ちっとも変わってないなお前、と笑うA君。僕は不思議に思った。

「誰から聞いたの? 僕が仕事を辞めたって」

共通の友人でその事を知っている人はいないはずだ。

「へへっ、風に聞いたのさ」

人間が風を読むことが出来るのだろうか。

いや、ありえない。

そもそも風を読むという行動が理解できない。

しかし我々は研究をやめてはならない。

これからも私は考え続けたいと思う。

風を読むという行為について。

関係ないですがA君の奢りで飲みました。

人の金で飲むという事は非常に楽しいです。

A君が奢ってくれる限り、また会いたいと思います。