が明けたとびしゃびしゃの少女が僕のパソコンをいじりながら言った。
最近の彼女はびしゃびしゃになる事があまりなかった。乾いていた。
例年に比べると少し遅いんじゃないのと僕がゴリラと黒髭危機一髪を遊びながら言うと、そうかもしれないねと彼女は答えた。
そのあたりで僕はゴリラと顔を見合わせた。普段喋らない少女が喋っているぞ! 僕達は視線でそのような会話をした。
「もうじきこの家を出て行こうと思う」少女は言った。
何で? 僕は尋ねた。
何で? ずっといればいいじゃない。
京都名物祇園祭こそもう終わってしまったが、近所では琵琶湖花火や大阪のPL花火もあるし地元で屋台通りが出る祭りもある。夏はこれからなのだ。
それでも少女は出て行くと言った。
彼女は自らが梅雨の精霊であると名乗り、あまり乾いた季節に日本で滞在するのは良くないのだという。
「それじゃあ君はここを出たらどこに行くんだ」
僕が尋ねると少女は静かに答えた。
アマゾンね、と。
僕はそのとき、ゴリラが何か決意しているのをみのがさなかった。
季節が揺れ動こうとしていた。