日常と虚構のワルツ

嘘時々ホント

キングダム

がおもしろい。

キングダムは紀元前中国において秦が国を統一するまでの話を描いた物語である。

お前みたいな下僕がのし上がっていく話やで、僕にキングダムを勧めた先輩はそう説明した。

現在四十巻を越える巻数が出ているが、近くにあったレンタルショップゲオにあったので最新巻まで全て借りてみた。

実におもしろい。これほど面白い漫画はそうないだろう。

読む手が止まらず、やらねばならない課題や作品作りなどもまるで手につかない。

夢中になって読んでいるとふいに肩をトントンと叩かれた。

振り向くとそこに、見慣れぬ槍を持った男が一人、立っていた。

その男の姿には見覚えがあった。そう、まさに今僕が読んでいる漫画、キングダムに

出てくる一般兵士のそれと酷似していたのだ。

「あなたは誰ですか」

僕が尋ねると、男は静かに口を開いた。

「俺は、秦の兵士。お前の前世だ」

「ぼ、僕の前世?」

「何代も前のな」

すごい! 何世代も前の僕は、今読んでいるキングダムに出てくる秦の兵士、まさにその人だったのである。

「秦に対するお前の想いが、私をここに呼んだのだ」

「僕の想いが……」

「おそらくその書物が原因であろう」

秦の兵士はそういうと、僕の持っているキングダムを指さした。

「その漫画、実は私も出ているぞ」

「えっ? どこに?」

僕が尋ねると秦の兵士は一巻を手に取り、最初のほうに映っている死体を指さした。

「これ?」

僕が聞くと秦の兵士はゆっくり頷いた。

「これ」

「始まりの前から……」

「ああ」

秦の兵士はゆっくり頷いた。

「死んでた」