に寄った際、魔法瓶になっているポットを見て同期が「これで俺も魔法使えるんじゃないか」などと言っていた。
いい歳して何を言っているんだ彼は、などと思い、帰宅してこの話をゴリラにするとゴリラは我が家にあるティファールを指差した。
僕が「残念ながらそれは魔法瓶ではない」と言う話をすると彼は残念そうに肩を落として眠りに着いた。
夜中になってベランダで眠っていたびしょびしょの少女が起きてきて何か暖かい物を飲みたいと言い出した。
仕方なく僕は先ほどのティファールで水を温めた。
何となく先刻ゴリラと行ったやり取りを思い出し、ティファールの蓋の部分をこすってみた。
少女が何をしているのだと訝しげな顔で僕の行動を眺めていた。
僕はそんな少女の視線を痛く思いながらもティファールの蓋をこすり続けた。
しばらくしてお湯が沸いたのでコーヒーを作ろうとカップにお湯を注いだが、何故か中身が出てこなかった。
おかしいなと思い蓋を外すと中にオカマがいた。
「ようやく私を封印から覚ませてくれたわね」オカマは僕に言った。
僕が最近オカマに憧れを抱いているという話をするとオカマは頷いた。
「オカマは良いわよ。自由。何より自由。そして自由なの」
僕と少女はオカマの卓越した人生観に感動した。聞くところによると随分苦労してきたらしい。
「人間を皆殺しにしようとする魔女と戦った際に私はこのティファールに閉じ込められたの」
オカマはハンカチで涙をぬぐいながら答える。
一体どういう了見でオカマが象印製のティファールに閉じ込められたのかは甚だ理解できないが、何故象印が魔法瓶の製造に特化しているのかは何となく分かった気がした。
日本の経済の闇だ。