だった。
私がレジ中の在庫チェックをしていると、ふいに背後のカウンターがトントンと鳴り響いた。
振り返るとお客様が無言で立っており、商品をレジにおいてカウンターを叩いていたのだ。
声掛ければ良いのに、なんだこいつは。
そう思ったが気づかなかったこちらに非があるのは否めないのでお待たせしましたと慌てて駆け寄る。
「おまたせしましたあじゃじゃーす!」
レジにて商品をスキャンし、値段を伝える。
「ピッ! 1550円でござーす!」
しかし私の言葉を聞いてもお客様は微動だにしなかった。それどころかまだ机を叩いている。
さすがに様子がおかしいと思い声を掛けた。
「あのぉ、おきゃっさん? っざした? どうしゃした?」
「話しかけるな」
低く、くぐもった声だった。
「今は危険だ」
お客様は静かに私に語りかける。
「き、危険ってなんがっすか?」
「世界が滅ぶか否かの瀬戸際なのだ」
お客様は静かにカウンターを叩く。どうやらその儀式が重要らしい。
「宇宙との間にエネルギーのパイプを作る。烏枢沙摩明王の力を借りてな」
それと世界に何の関係が。
「世界には常に気が流れておるのだよ」
「はぁ、なるほど」
さっぱりわからん。
「ところで、貴様」
「へぇ」
「これ、安くならんのか?」
「帰れ」