日常と虚構のワルツ

嘘時々ホント

社員食堂

の入り口近くにはいつもその日のメニューのサンプルが置かれている。

このサンプル、蝋で出来た食品サンプルなどではなく、実際の食材を使用しているようでいつも時間が経つにつれ食材がくたびれていくのだった。

今日の一押しメニューはラーメンだった。どこかの有名ラーメン店とコラボした付け麺ということだった。

午後出勤だった僕が食堂に向かうとサンプルのラーメンが干からびていた。

社食の干からびた麺を見て、何だか僕は不思議な気持ちになった。

それはなんだか、寂しさのような物で溢れている気がしたのだ。


一人暮らしをしてから僕はあまり外食をしなくなった。

単純にお金の節約が目的なわけだが、自分の料理の腕を向上させたいというのもあった。

母親の料理は実家にいた頃から観察していたし、好きなメニューのレシピは大体母から伺っていたので簡単に味を再現する事が出来た。

しかし出来たものを食べてもあまり美味しくない。

味は確かに一緒だったが、美味しくなかったのだ。

一体それは何故だろうかと考えていたが、最近になって気づいた。

一人で食べるご飯と言うのは本当に美味しくないのだ。

以前放送していた『幸福グラフィティ』と言うアニメの第一話で、ご飯がまずいのは一人で食べるからだと主人公が言っていた。

それはまさしくそうなのだろう。

干からびた麺は、僕にそのような事を思い出させてくれた。


ゴリラやびしょびしょの少女と食事を共にするようになって団欒とはこのようなものかと思った。

将来結婚できるかは分からないが、もし僕が将来的に誰かと結婚して食事を取る際は、必ず家族全員で食事を食べようと思う。

食事とはあったかい飯をたくさんの人と共有するから良いのだ。