にいって家に帰ってくると呼び鈴が鳴った。
誰だろうと思い出てみると白い髪に白い鎧を来た人間がそこにいた。
「やぁやぁどうも、冬将軍です」
冬将軍はぺこぺこと頭を下げる。
「えらい唐突ですね」
「春なんで」
「暇なんですね」
「そういうわけです」
僕は冬将軍を家に上げた。
彼女が出て行って以来一人で過ごす時間が多かったので誰かとゆっくり話すのは僕にとって嬉しい事だった。
僕は近況を彼に話した。何でもない話だったが冬将軍は愉快そうに肩を揺らした。
彼が笑うと部屋の温度が二度程下がった。僕は仕方なく部屋着であるパーカーを羽織った。
「そういうわけで先日地獄から彼女より手紙が来たんですよ」
僕は冬将軍に手紙を見せた。手紙の文面には暗い痛い恐いと言った前衛的な内容の血文字が並んでいた。
「いいですねぇ、仲が良くて」
「冬将軍はいつも春になると何をしてるんですか?」
「洗濯物ですね」素朴だ。
「それにしても関西は良いですね。人々が切迫していなくて。私は関東に住んでいるんですが、関東は酷いもんです。人々が時間に追われてる」
「そうなんですか」
僕が尋ねると冬将軍は「ええ」と頷いた。
「線路を凍結させると凄いひんしゅくをかうんですよ」誰でも怒る。
晩飯でも食べようかと言う話になったが僕が現在1日250円で過ごさねばならないという話をすると冬将軍は「それは仕方ないですね」と寂しそうに笑い帰っていった。
彼が冬場になり本領を発揮するころには僕も関東に引っ越しているかもしれない。
今のうちにどうやって関東から冬将軍を引越しさせるか考えることにする。