だった。
給料日と言うシステムをよく知らない人に説明すると、
給料日と言うのは会社から施される配給制度であり、
大半の人間が血反吐を吐きながらそれでも仕事を続ける強制力でもある。
人間はこの給料日がないと生きていけない。
給料日になると不思議な事に勝手に私の口座にお金が振り込まれている。
昨日まで265円しかなかった私の口座が何万円ものお金で溢れかえるのだ。
「まるで魔法みたいな話だ」
会社帰り、スーツ姿の僕がatmで残高を見ていると横でatmをいじっていた女性が「ふふ、そりゃそうでしょう」と声を掛けてきた。
「なにせそれは魔法によってあなたの口座に行き渡っているのだから」
「えっ、まさか僕に話しかけてます?」
「はい」
話を聞くと、女性は私の勤める会社の本社より派遣された魔法使いらしい。
「atmには特殊機能があるの」
「どんな物なんですか?」
「まず振込みボタンを押してこの機械にお金を入れる」
「はい」
「機械が紙幣を読み取ってふたが締まると魔法の力でお金が転移し、異世界に存在するあなたの銀行口座へと移る」
「なるほど、すごい技術だ」
もっと他に使い道のありそうな技術だが、取り合えず僕は感心した。
「つまり僕達にこうして給料が行き渡るのは、あなた達魔法使いがこうしてatmで魔法を使ってくれてるからなんですね」
「いや別にこの作業に関しては私、魔法なんて使ってませんけど……」
困惑した顔の女性に「あ、そうですか」と返しておいた。
お金が入ったので少し豪勢に彼女と焼肉パーティをした。
僕が肉を食べ、天井から苦悶の表情を浮かべた彼女がそれを眺めるパーティだった。
楽しかった。