日常と虚構のワルツ

嘘時々ホント

実家に

いる。

大学時代の部活の友人の結婚式の二次会に出る為だ。

今何回「の」って言ったのだろうか。


会場には久々に会う後輩や友人もいて、なかなかに楽しかった。

良い雰囲気で、僕は変わったようで変わらない皆の姿に、学生時代を思い出して懐かしくなった。


学生時代の僕はと言えばもっととげとげしていた。

いつも殺戮を求めていたし、大学は僕にとって戦場だった。

血に飢えたナイフが渇きを知ることはなく、ふと見るといつも地面には人間の一部が転がっていた。


ある時僕がスナイパーライフルを覗きながらくわえタバコをしていると「何してんですか、先輩」と後輩のみことちゃんが話しかけてきた。

みことちゃんは新兵で、僕の一個下の女の子だった。

「狙いを定めてんのさ。教授をいつでも殺れるようにな」

「なんでそんな簡単に人を殺せちゃうんですか。みんなおかしいよ。この世界も、この戦争も」

「単位を取ればいい。そうすりゃ解放される。殺すのだって、その為だ」

「そんなやり方、絶対間違ってる」

「でも殺らなきゃ殺られるんだ。この世界はそういう風に出来てる」

「もっと、もっと違う解決法があるはずですよ!」

みことちゃんは叫ぶと、どこかへ走って行った。

その姿を見て僕はやれやれと肩をすくめた。若いな。


数ヶ月後、みことちゃんは学校を辞めた。

その手があったか、と思った。

給料日

だった。

昨夜は絶食をした。

今朝は白米を食べた。

味のあるものを食べるのは三日ぶりだった。

 

僕はメンチカツを勝った。

世の中に、これほど美味しいものがあるのかと心底驚いた。

涙を流しながらうめぇうめぇと言いメンチカツを貪った。

会社の人たちが若干引いていた。

 

「坂君、もうちょっと綺麗に食べたらどうだい?」

上司が焦って声をかけてきた。

仕方なく僕は彼の頭部を掴むと、うめぇうめぇと言って貪った。

別部署の女性社員がきゃあと叫び声を上げたので、それもうめぇうめぇと貪った。

 

貪りつくすと社内には誰もいなくなった。

アルバイトの女の子や、お世話になった上司達も僕のおなかの中だった。

時計をみると定時だったので僕はそのままタイムカードを押し、家に帰った。

 

明日も頑張ろうと思う。

食料の備蓄

が底をついた。

 

僕の職場の給料日は10日振込みだった。

だが、何と今月から突然給与を15日振込みに変更するという暴挙に出た。

そのせいで我が家の財政は危機的状況にあった。

 

「これが最後のソバだ……」震える手で僕はソバをすすった。

一本ずつ喰えばソバも割と長持ちする。僕はそのことに気がついていた。

しかしそのソバも最後の一本となった。

あっけないくらい簡単にソバはスルスルと僕の喉を通った。

 

全財産は500円だった。

僕はこの500円で、明日の朝と昼と晩御飯をまかなわなければならなかった。

 

僕は、一体何がいけなかったのか考えた。

お金の無駄は、一切していなかったはずだ。

強いて言うとしたら、毎日レッドブル二本はいっていた。

仕事終わりに酒を一缶、買っていたし、お菓子も一日一食食っていた。

それらを合計すると一日700円だし、月の出勤日に換算すると14000円ほどになる。

お金の無駄は、本当に一切していなかったはずだ。

 

既に僕は骨と皮だけになっていた。

昨日まで体重60kgくらいはあったが、今日一日で僕は骨と皮だけになっていたのである。

 

そうれはもう、そうなのである。