日常と虚構のワルツ

嘘時々ホント

昼夜が逆転する呪い

にかかった。

夜寝れないのに昼に寝てしまう呪いなのであった。

この呪いを解くには西の最果てに住むと言う魔女に会う必要があった。  
 
 
 
そんな訳で外に出ようと思ったのだが、着ていく服がなかった。

ふんどしとか、Tバックとか、何故かそんな物ばかりが見つかった。

29歳で無職なのでふんどしで外に出るのは少しばかりリスクが高くなってしまうと考えた。

関係ないけど29歳で無職って神様で中学生みたいなノリで僕は嫌いになれない。

だからなんだと。  
 
 
 
来週観光と就職面接がてら東京に行く事になった。

最近の日本は海外の方が多いので全くノンアポで果たしてやっていけるのか不安はある。

そう言えば以前受けた会社の面接官が訳のわからない文脈で「インバウンドですか」と尋ねてきた事がある。

インバウンドとは海外から日本に来る観光客の事であるし、経済的な意味合いでは海外の方が日本国内でお金を落とす事で得る特需を指し示す単語として用いられる。

あの時の投げつけられた「インバウンドですか」は完全におかしかった。そもそも何がインバウンドなのか分からない。

突然放たれた「インバウンドですか」と言う謎の質問に僕はどう答えるべきだったのだろう。

「俺が、俺達がインバウンドだ!」とか言っておけば良かったのだろうか。

謎は深まる。

絶食すれば

やせると思った。

三日間の絶食を通してどうにかドアから抜け出す事に成功した。

僕は三日間絶食したわけだが、同居人はその間僕が備蓄しておいた炊き込みご飯を食べて凌いでいた。

「デブなのにやつれてるんですね」と言われて心が温まった。  
 
 
三日遅れで面接に行った

僕が面接に行くと「誰だこいつは」と言う顔をされた。

「ほらほら僕ですよ、内定をもらう予定の僕です」と言う新手のオレオレ詐欺を行ってお茶を濁した。

内定はもらえそうだったが投資系の商材と言う死ぬほど胡散臭い取り扱い商品に内心警笛が鳴っていた。  

僕の将来の夢は僕の文章を読んだ人間が全員爆発四散する事だが、果たしてこの職場ではその夢をかなえることが出来るのか疑問だった。

「どこに行ってもその夢は叶わないと思います」と同居人が言った。  
夢は諦めてはならない。

暇だ暇だ

と言い続けていたら「暇なんだから来いよ」と言う名目で飲み会に誘ってもらいまくっていた。

気がついたら一週間でお酒を飲んでいない日が一日しかなかった。

こんなに誘ってもらえるなんてありがたい話ですね、何て思っていた。  
 
 
久々に面接だったのでスーツを着ていくことになった。

大阪にあるベンチャー企業で、マーケティングを行う会社だった。

僕が意気揚々とスーツを着ると何故か腹部が苦しかった。

病気かと思って背後にいるストーカー兼同居人にウエストを測ってもらったところ、メジャーが脂肪に飲み込まれて姿を消した。

なるほど。  
 
確かに最近お腹が柔らかいとは思っていた。

僕がある日お腹を指で押したところ、指はずんずん脂肪に飲まれてしまったことがあった。

道行くおじさんに「僕のお腹をつついてもらえますか」と頼んだところ、彼は脂肪に飲み込まれてそのまま出てこなかった。

奇妙な事もあるものだなぁと思っていたのだがまさか太っていたとは思わなかった。  

すっかり太ましくなった僕のウエストはスーツを通さなかった。

由々しき事態である。

「ダイエットをすべきではないでしょうか」と同居人が何か咀嚼する音を立てながら僕の背後で提案した。

臭いがしたので納豆だろうと思った。

「納豆か、いいかもしれないな」

納豆はたんぱく質が中心である。筋トレの効果もマシマシボンバーであるからして、カロリーオフと同時に身体も締まってよいかもしれない。

よし、とりあえず面接後に納豆を買おう。

僕はそう思い無理やりスーツを着ると面接へと向かった。

しかし残念ながら太くなりすぎた身体はドアを通る事が出来なかった。

みちみちと肉が壁にめり込む音と共に僕は身動きが取れなくなった。  

そういうわけでしばらく家から出られません。

よろしくお願いします。